三浦しをん 愛なき世界

 

「愛という概念なき植物のことを愛している」本村と、

狂おしいほどの情熱に取り憑かれている。本村がどれだけ長生きしても、植物の謎がすべて明らかにしてなることは決してないとわかっているのに、ほのかに光る細胞を見つめつづけてしまう。

たとえ失敗に終わったからといって、全力で愛した記憶も気持ちも消えることはないはずだ。自分に備わった情熱と愛のすべてをかけて、植物の研究に恋をしているから、それがいまにも終わりそうなことが、こんなにも苦しくてつらくてならないんだ。

 

「植物へ注がれる愛が自分に向けられることはないと分かっていながら、植物のことも本村のことも理解したいと強く思い、また理解が深まるにつれて愛おしいと感じる気持ちも増す」藤丸…😭

しつこくして本村を困らせるつもりはないし、叶わなかった恋心を早く埋葬してしまいたい気持ちは藤丸にだってあるので、本来ならば松田研究室への宅配は、適当な理由をつけて断るべきなのかもしれない。でも、「知りたい」という思いがやみがたく胸のうちにある。

理解は愛と比例しない。相手を知れば知るほど、愛が冷めるということだってあるだろう。藤丸の本村への思いは、それとは逆だった。理解が深まるにつれ、愛おしいと感じる気持ちも増していった。

「その情熱を、知りたい気持ちを、『愛』って言うんじゃないんすか?植物のことを知りたいと願う本村さんも、この教室にいるひとたちから知りたいと願われてる植物も、みんなおんなじだ。同じように、愛ある世界を生きてる。俺はそう思ったっすけど、ちがうっすか?」

 

双方、なんて純粋で瑞々しい愛なんだ。。

二人の関係は恋愛に発展することはないけれど、それが愛の総てではないって、読んだ人には伝わるはず。

 

目の前で恋人いらない宣言された上にそんな風に思ったことはなかったと振られた直後の私にピッタリすぎる、愛とは何かを再度深く考えさせられるお話でした。

あと、植物の研究に没頭する様子も丁寧に紡がれてて、院に進学したい気持ちが膨らんだ…

綺麗な装丁に惹かれたプラス三浦しをんの文章が好きだから手に取ったわけで、こんなに自分を重ねられる小説とは思わなんだ!

 

大学三年の夏休みを特別な一冊で締めくくれた。
素敵な秋に、冬に、なる気がする🍂⛄️

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